猫の防災|避難先・備蓄・キャリーを平常時に確認する
地震などの災害に備えて、猫のために何を準備すればいいのか。答えの多くは、災害が起きてからではなく平常時に決まります。環境省と自治体の公表情報をたどると、平常時に確認するのは「一緒に避難できる避難所とそのルール」「キャリーに入れる状態」「水とフードなどの備蓄」「身元表示」「避難所以外の選択肢」の5つに整理できます。なかでも「同行避難」という言葉の意味は誤解されやすいので、最初に確認しておきたい点です。
猫の防災は「災害が起きる前」に決まる
環境省は現行の資料として「人とペットの災害対策ガイドライン」(平成30年3月発行)を公開しています。同省のウェブサイトでは、避難するときはペットと一緒に避難(同行避難)できるよう備え、「ペットとの同行避難が可能かどうかをあらかじめ確認」しておくこと、そして「十分な水や食料の他、常備薬等も用意し」ておくことが案内されています。確認する対象は次の5つに分けられます。
- 一緒に避難できる避難所と、そのルール
- 環境省は同行避難が可能かどうかを「あらかじめ確認」するよう案内しています。ルールは避難所ごとに違う可能性があります。
- 猫をキャリーに入れて運べる状態
- 複数の自治体が、平常時からキャリーバッグやケージに慣らしておくことを挙げています。
- 水・フード・トイレ用品などの備蓄
- 環境省は日数を示していませんが、自治体が目安の日数を示している例があります。後の節で並べます。
- はぐれたときのための身元表示
- 東京都は「はぐれてしまったペットが飼い主の元に戻れるよう、身元表示をしましょう」と案内しています。
- 避難所以外の選択肢
- 横浜市は在宅避難、一時預け先での飼育、避難所への避難という複数の避難行動を検討・準備するよう挙げています。
避難先と受け入れの条件を平常時に確認する
先に決めておくのは、猫を連れて行ける避難所がどこかということです。環境省は「ペットとの同行避難が可能かどうかをあらかじめ確認」するよう案内し、避難所等では「自治体の指示に従い、ルールを遵守し、他の避難者に迷惑をかけてはなりません」としています。東京都保健医療局も「それぞれの避難所のルールに従ってください」と書いており、ルールは全国で同じとは限りません。
- 住んでいる自治体の指定避難所がどこか
- その避難所へ猫を連れて行けるかどうか
- 連れて行けた場合、猫をどこで飼育することになるか
- 自分で用意して持って行く必要がある用品は何か
- 自治体が公開しているペットの災害対策のページに、他に条件が書かれていないか
「同行避難」は、避難所で猫と同じ空間で過ごせることではない
ここが最も誤解されやすい点です。答えは「同じ空間で過ごせるとは限らない」です。東京都保健医療局は「同行避難とは、災害発生時に飼い主が飼育しているペットを同行し、避難所まで安全に避難することです」と説明し、続けて「避難所において人とペットが同一の空間で居住できることを意味するものではありません」と明記しています。つまり同行避難は、避難所での過ごし方ではなく避難する行動を指す言葉です。
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| 自治体 | 同行避難についての記載 | 避難所での飼育についての記載 |
|---|---|---|
| 東京都(保健医療局) | 「同行避難とは、災害発生時に飼い主が飼育しているペットを同行し、避難所まで安全に避難することです」 | 「避難所において人とペットが同一の空間で居住できることを意味するものではありません」「それぞれの避難所のルールに従ってください」 |
| 横浜市(動物愛護センター) | 「避難行動を示す言葉であり、避難所内で飼い主がペットを同室で飼育管理することではありません」 | 「一時飼育場所の設置場所の検討など、地域防災拠点の実状に応じたペット対策を日頃から考えておきましょう」 |
| 大阪市(健康局生活衛生課) | 記載を確認したのは避難所での生活についての部分 | 「避難所では人とペットは別の場所で生活し、ペットの世話は飼い主が自ら行うことが原則です」 |
3つの自治体はいずれも、猫を連れて避難することと、避難所で猫と同室で過ごすことを別のものとして書いています。世話をするのは飼い主である、という点も共通しています。
猫をキャリーに入れて運べる状態にしておく
猫を連れて避難するには、キャリーに入ってもらう必要があります。横浜市は基本的なしつけの項目として「キャリーバッグやケージに慣らしておく」ことを挙げ、東京都保健医療局も「普段からしつけを行い飼い主がきちんとコントロールできるようにしましょう」として、クレートトレーニング等のしつけに触れています。災害が起きてから初めてキャリーを出す形にしないための準備です。
- 猫がキャリーやケージに慣れているか
- 猫の数に対してキャリーが足りているか
- すぐ取り出せる場所に置いてあるか。押し入れの奥ではないか
キャリーの種類や開き方、サイズの見方はキャリーを選ぶときに見るポイントにまとめています。用途として災害時の備えも扱っていて、普段から慣らしておく話もそちらに入っています。
水・フード・トイレ用品を備える
何日分そろえれば足りるという数字は、出典によって扱いが違います。環境省のウェブサイトは「十分な水や食料の他、常備薬等も用意し」とだけ書いており、日数は示していません。一方で、日数の目安を示している自治体があります。
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| 出典 | フード・水の目安 | 挙げられている品目の例 |
|---|---|---|
| 東京都(保健医療局) | 「最低でも5日分、できれば7日分を目安に」 | フード及び水、常備薬、食器、トイレ用品、首輪及びリード、健康記録、写真、ケージ/キャリーバッグ、ガムテープ、おもちゃ |
| 横浜市(動物愛護センター) | 「少なくとも5日分以上(できれば7日分以上)」 | フード、水、薬、ペットシーツ、リード、糞尿処理用具、飼育手帳(飼い主の連絡先、ペットの写真等) |
| 大阪市(健康局生活衛生課) | フードは「少なくとも5日分、できれば7日分」 | 優先順位1が常備薬・リード・キャリー・ペットシーツ・食器、優先順位2が飼い主の連絡先やペットの記録、優先順位3がおもちゃやタオル |
3つの自治体は近い日数を示していますが、これは各自治体が目安として案内しているもので、環境省が全国共通の日数として示している数字ではありません。品目の並べ方や優先順位の付け方も自治体によって違います。持病があって決まったフードや薬が必要な猫では、必要な量の考え方も変わります。
停電すると、電源を使う給水器は止まります。電源を使わない方式を併せて置いておく考え方は留守番・多頭飼いの猫の水飲み場を考えるで、掲載商品の公表仕様をもとに整理しています。
脱走と迷子に備える
はぐれたときに戻れるようにしておく、という準備です。東京都保健医療局は「はぐれてしまったペットが飼い主の元に戻れるよう、身元表示をしましょう」、横浜市は「大切なペットのために、飼い主の明示を徹底しましょう」と案内しています。大阪市は「迷子札(鳥は足環など)をつけるとともに、半永久的に識別可能で確実な身元証明としてマイクロチップを入れるといった、二重の対策をとりましょう」と、2つを組み合わせる形を挙げています。
マイクロチップについては制度の状況を確認しておきます。埼玉県のページ(保健医療部生活衛生課、2025年2月7日掲載)によると、令和4年6月1日から犬猫等販売業者に装着が義務付けられており、「犬猫等販売業者以外の犬又は猫の飼い主のかたについては、飼っている犬猫のマイクロチップ装着は努力義務となります」とされています。登録先は環境省の指定登録機関である公益社団法人日本獣医師会です。
- 猫の写真が、すぐ見せられる形で手元にあるか
- 飼い主の連絡先を書いたものを、備蓄と一緒に入れてあるか
- 健康の記録や、飲んでいる薬の名前が分かるものがあるか
- 首輪や迷子札が、いま猫に付いている状態か
避難所へ行く以外の選択肢も考えておく
災害時に必ず避難所へ行くとは限りません。横浜市は、被災状況等により在宅避難(自宅で避難生活を行うこと)、一時預け先での飼育、地域防災拠点への避難といった複数の避難行動について「検討・準備しましょう」と案内しています。どれを選ぶかを平常時に1つに絞る必要はありませんが、3つとも想定しておくと準備する内容が決まります。
預け先については、東京都保健医療局が「万一のときの預かり先を確保しておくことも大切です」、横浜市が「事前に調整しておきましょう」としています。大阪市は「動物病院、動物保護団体などで預かってもらう場合があります。預ける前に条件や期間、費用などについて必ず確認しましょう」と、確認する項目まで挙げています。親戚や知人に頼む場合も、猫を預かれる状況かどうかは平常時に話しておくことになります。
- 在宅避難になった場合に、水・フード・トイレ用品が足りるか
- 預け先の候補を挙げてあるか。相手に話してあるか
- 預ける場合の条件・期間・費用を確認してあるか
- 猫を預けるときに一緒に渡すもの(フード、薬、記録)がまとまっているか
平常時に確認できるチェックリスト
ここまでの内容を、今日確認できる形にまとめます。項目はいずれも上で挙げた出典に対応しています。
- 猫と一緒に避難できる避難所と、そのルール・飼育場所を確認した
- 自治体が出しているペットの災害対策のページを読んだ
- 猫がキャリーやケージに慣れている
- キャリーが猫の数だけあり、すぐ取り出せる場所にある
- フードと水を備えている。日数は自治体の目安を確認した
- 常備薬が必要な場合は用意した
- 猫砂・ペットシーツ・排泄物の処理用品を備えている
- 食器を備えている
- 猫の写真と飼い主の連絡先を、すぐ見せられる形で持っている
- 首輪や迷子札などの身元表示をしている
- 在宅避難・一時預け先・避難所の3つを想定した
- 預け先の候補があり、条件・期間・費用を確認した